一般社団法人日本遊技関連事業協会(日遊協、西村拓郎会長)の広報調査委員会は3月11日、第6回広報担当者フォーラムを開催した。当日は46名が参加するなか、第1部では脳科学者で公立諏訪東京理科大学共通教育センター教授の篠原菊紀氏が「快感商売の基礎」と題した講義を実施。第2部ではグループディスカッションが行われた。またフォーラムの冒頭、担当理事の福山裕治副会長が「今回のフォーラムは2021年11月開催の広報担当者井戸端会議に篠原教授が参加されたことから繋がった」と、開催経緯を説明した。
第1部の講義では、<遠い昔のパチンコCM解析例><見ることは好きになること><選好度を強化、減衰するもの><ぱちんこがらみで共起する快感>についてレクチャー。
<遠い昔のパチンコCM解析例>では、視線と脳活動について説明。「なぜ視線が重要かというと、見ることを通してより好きになる現象がある。好きなものを選ぶとき、視線がそちらに動くという現象があり、これを選好における視線の雪崩現象という。また選好において意図的に眼球や首の動きを伴わせると選好度を左右することができることが知られている」と伝えた。また、この基本になっているのが、人類学的には対面で授乳する哺乳類であることを挙げ、人間が目線を合わせることで選好度に繋がってくる生き物だと指摘。そういうメカニズムを通して、見ることは好きになることの理由を、さまざまな角度から検証した結果を分かりやすく解説した。なお、パチンコメーカーのCMを例示しての説明では、視線の集まる場所を示しつつ、脳活動についても着目。ユーザーの遊技頻度(ヘビー、ミドル、ライトユーザー)で脳活動が異なることを示し、ライトユーザーにはほとんど効果がなく、ある程度興味を持ってくれる対象にしか意味を持ってこないと伝えた。
次に<選好度自体を強化、減衰するもの>では、一度選ばれてしまうと選ばれたことにより選好度が上がる現象、選ばれないとそちらの選好度が大きく低下する現象が知られているとし、また同じ選好でも、選好時に何らかの動作を加えると選好度が1~2割アップすることも知られていると伝えた。加えて、最も強いのは、何かを選ぶときに快感が共起していることであると指摘。「何かしたときに、気持ちよくなることが同時に起こってくれると、それを余計に好きになる。気持ちよさと関係なくても好きになるという現象が起きる。逆に不快なことが共起すると不快になる」と述べた。
さらに、直接的には線条体、ドーパミン系で選好変化が起こると指摘。勝った店が好きになるとか、出た台が好きになるという現象もおそらく快感の共起で起きると説明するとともに、線条体は行動と快感を一致させるような働きをしていくとし、ここが予測的に活動するとそちらに向かっていこう(たとえばそのホールに行こうとか、その台を打とうとか)ということがより起きやすくなっていくと説明した。
そのため、「広報というのはこの線条体の活動をどうしていくか、どんな風にアプローチしていくのかということにもなっていく」と提言。この線条体が、やる気、意欲の主役であり、ホールのチラシでこれがどう発火するか、遊技機を思い浮かべたときにこれが強く発火するかが遊技動機や遊技機購買でも勝負となると伝えるともに、線条体を発火させるには繰り返し見てもらうことが必要であり、注意バイアスモデルでいうと注意を引くことがその初期の活動を高めることに繋がっていると述べた。
最後に、「こういう話をすると、選好度を高めようという話と、何とか好きにさせてはめよう、依存させようという話とが一緒になるのではないかと考えるかもしれないが、我々の研究で選好度を高めるという話は依存には直結しないということが、分かってきた」と報告。広告宣伝が依存リスクを高めるとはいえないなか、適切な広告宣伝の実施は遊技障害という側面から問題がないことを強調した。
加えて、2月15日にWHOのICD11の詳細版が出たことに触れ、「ギャンブル障害について限定的なった。DSM5なら9項目中4項目以上で障害疑いとされていたのが9項目中全て該当しないと認めないことになった。そうすると久里浜のデータで依存云々の話をするのもおかしいという話になってくる」と、最新のギャンブル障害に関する動向を踏まえて持論を展開した。
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