「健全化推進機構」 (2005年4月20日) 初代編集長 三浦健一
名称が変わっていた。まだ仮称だが。前「不正排除対策機構」である。正式には「遊技産業健全化推進機構」。あくまで遊技機不正対策は入口であり(とはいえ、最重要課題だが)、この第三者機関が軌道に乗れば、前回も触れたように、ここが業界の諸問題解決—依存症、脱税、景品買取、社会貢献等々のゲーミング・コントロール・ボードにまでその役割を高めようという前提での名称だ。このことについては、昨日、同友会総会の懇親会の席で、僕が日遊協の深谷さんから直接聞いた話。セキュリティー問題検討委員会のO委員長が「OH!珍しいじゃない。会長のことをあなたがそんなに褒めるなんて」と言ったが、今回の機構の構築については、母艦である全日遊連も含めて、業界には頭が下がる思いが強い。やればやれるんや、と業界団体の力量を見直した。もちろん警察庁の強力な後押しもあることは否めないが。
課題は不正ホールに対するペナルティ(メーカー、販社の販売制限)、機構立ち上げのための財源だ。財源については前回にも触れたが、具体的には遊技機入替時点でメーカー、ホールが台当たり100円ずつ負担。中古機については販社、ホールが50円ずつ負担する方向。それ以外で機構には周辺機器メーカーや運送業者なども参加することになるから、それぞれの業界団体の拠出金を予算に充当する。すでに日遊協が、同友会を中心にPCSA、余暇進などに機構参加を呼びかけて、彼らも参加の意思を表明している。同友会、PCSA、余暇進はすでに連絡協議会を開催しているから、この3団体の参加は間違いないと思われる。21世紀会はいまのところ7団体だが、補給工組がこれに加わるようだ。
もうひとつの課題のペナルティ。これは、(1)営業停止など行政処分が下された、(2)誓約書を提出しない、(3)立入検査を拒否、(4)立入で異常が発見された、(5)再検査に応じない、というそれぞれの項目に応じてペナルティが科せられることで煮詰めているが、それぞれの状況に応じてどう整合性をとるか、また行政処分は警察は開示できないので明確な処分の実行日などが伝わらない。たとえば営業停止の最大6ヵ月をこの販売制限に当てはめるとしても、情報開示がない以上はその期限設定が不可能だ。これも含めて、全日遊連の山田理事長は、機構が立ち上がって軌道にのり社会的にも認知され実効をあげた時点で法改正も視野に、警察庁にお願いしていきたいと話している。このときに、前回書いた「誓約書を出さない店は営業許可がおりない」という法整備も可能になる。とりあえずは、ペナルティについては日工組・日電協・中古機流通協議会などにおける売買契約書(特約条項)及び規程作成が先行、それにリンクするかたちで誓約書の内容も変わってくる。つまり、独禁法の問題も含めて、契約書と誓約書で、きちんとしたプライオリティを確保しておくことが最優先されることになる。
今回、まだ案の段階(昨年11月)の統一誓約書、契約書の特約条項(日工組の叩き台)、全日遊連の不正防止対策大綱、同推進体制などを、本誌の月末発行号に6ページで書いたが、その後かなりの進展がされている。全日遊連案の「対策機構」は第三者機関でなく、その活動監査するものとして第三者機関の「検査監視協議会」が考えられていたが、日遊協側の意向も反映されて機構そのものを第三者機関とすることで合意を得ている。全日遊連は7月21日に、この不正排除の総決起大会を開く。その時点では機構に関してもほぼ具体的な骨子も決められていることだと期待される。
ついでに。警察庁HPに先週15日にすでに公表されていた。雑誌編集に追われて開いていなかった。「平成16年における風俗警察の現状について」である。遅ればせながら本日のFAX情報で流したが、昨年末のホール店舗数は1万5、617軒。前年より459店舗減である。遊技機総台数は496万9、156台。こちらは約1.5%増だ。店舗大型化がさらに加速していることがうかがえる。詳しくはFAX情報を御覧いただきたい。業界がいま、危機感をもっているのは遊技参加人口の減少である。このままの状況が進行すれば、それこそ産業そのものが衰退するのを傍観してしまうしかない。ホールもメーカーもみんなもっと危機意識を発揚すべきである。その打開策を早急に講じるべきだ。その意味で同友会の定性調査報告書は、たんなるアンケート調査よりリアルに業界の現実と対応策を提言している。同友会もまた、新体制になってから頑張っていることに敬服する。 >_<)ちょっと今回、業界を褒めすぎたかァ!でも、いいものは、いいと評価すべき。
二代目編集長オカザキ註
故三浦の記事の最大の特徴は「辛口」だったと思います。その意味では、業界を褒めるということをあまりしなかったかもしれません。日遊協の会長であった深谷さんを褒めるというのは確かに珍しいことでした。というか、主要業界団体のトップを三浦が褒めるということはまずなかったかと思います。余談ですが、それを珍しいと言ったというOさんとは、おそらく三浦を偲ぶ会で挨拶してくれた一人のOさんでしょう。私も長い間お世話になっておりますが、三浦とはそれはもう長い間の関係でしたね。
遊技産業健全化推進機構はたしか2006年に設立となりますのでこの翌年ですね。この時期は業界的にはとても多くの課題を抱えておりまして、記事の2005年4月といえば、一番猶予期間の長かった沖縄県でのいわゆるみなし機(旧規則機)の撤去も完了しておりましてホールにおいては遊技機導入コスト負担がとても重くなっていた時期です。ぱちんこは既に399タイプが登場しておりまして4号機に押されていた鬱憤を各メーカーが射幸性で攻めて解消するかのような市場でしたがパチスロはまだまだ経過措置4号機が健在で、このあとも経過措置ギリギリまで新機種として製造販売されていたわけです。
射幸性の問題とは別に不正改造の問題もとても多かったのも今とは違う点。機構はこの問題解決のための切り札となると目されており、警察庁が強力な後押しをしているというか、むしろ警察庁が旗を振って業界にやらせた、くらいに私は解釈しておりますが、このときは「業界の諸問題を遊技産業健全化推進機構がすべて解決してくれる」と私も本気で考えておりました。
遊技産業健全化推進機構は今も機能しておりまして業界にとっては無くてはならない極めて重要な組織ですが、当時の私の期待及び三浦が寄せた全力の期待を担うにはちと酷だったかと思います。ゲーミングコントロールボードという言葉が出てきますが、これはたぶんネバダ州のGCBのことをどこかで聞きかじって使ってみたかったのでしょう。三浦は「使ってみたい言葉」をしばしばメモしたり書籍にて線を引いたりして何かのときに使おうということを積極的にやっていた人です。私もその姿を見て真似してみようとしたのですが、私の場合は上手くいきませんでした。使ってみたい言葉をメモしたところで忘れてしまうからです。もっとも、三浦も呑んでる席で箸の袋にメモしたりして翌日朝起きて見たら何を書いてるかわからないとしょんぼりしていることも多かったですね。「これ読める?」と聞かれて「社長が読めないものを俺が読めるか!」というやり取りを、当時のシークエンスの社員は何度も経験しています。そもそも三浦は字が良く言えばとても特徴的、要するに悪筆が過ぎましたので三浦がパソコンで原稿を作るようになるまでは編集作業は「解読」から始まるわけで大変だったことだろうと今振り返ると思います。
遊技産業健全化推進機構に寄せた「これでいろんな問題が解決できる」という期待は、今の機構ももちろんですがそれ以外のいろんなところにて担ってくれているような状況になりつつある、ということをたとえば来年の今頃に具体的に言えるようになっていれば私としてもありがたいです。なんとすれば、機構設立前夜であるこの記事は今から16年も前のこと。設立後の機構が今も機能していることは素直に喜ばしいことに違いありません。
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