哲学科の大学院を出てこの業界のメディアに関わって以来、本名でもペンネームでも「遊技業界の社会的認知の(質の)向上」を主軸に、執筆活動をはじめとした仕事に注力してきた。2008年にはフジサンケイグループの経済産業紙であるフジサンケイビジネスアイと“CSR研究会”を立ち上げ、遊技産業におけるCSR(Corporate Social Responsibility;企業の社会的責任)への取り組みを横断的に調査するとともに、参加企業と共に他産業の取り組みをベンチマーク。新聞紙面を通じて情報発信も行ってきた。
当時は、CSRという言葉を聞いて「新しいCR機か?」と真顔で質問してくる経営者がいた時代。そこから10年強が経過し、遊技業界でもCSRという言葉が当たり前のように通じるようになり、いまでは多くの団体・企業がSDGs(エスディージーズ、Sustainable Development Goals)を意識した活動に着手しつつある。ただ、世の中ではSDGsの概念に基づいた経営を目指す風潮にあるものの、これへの取り組みが多岐にわたることから実現の困難さを指摘されるところでもある。
さて、SDGsが社会的責任を語る際に多用されるようになった現在だが、それまでに言われてきたCSRとはなんだったのか。社会的責任を語る言葉にCSV(Creating Shared Value;共有価値の創出)という概念もあったし、さらには中小企業庁が打ち出したCRSV(Creatingand Realizing Shared Value)という概念もある。一体その違いは何なのか?
CSRとSDGsの位置付けを簡潔に示せば、CSRは「企業として存在意義が問われ続ける中で社会的責任を果たすべく、普遍的に取り組んでいくもの」、SDGsは「2016年から30年までの国際目標として掲げられるなか、これに取り組むことで企業の経営をさらに強くするもの」と、捉えるのが分かりやすいだろう。
ではCSVとは何か。これは経営戦略の1つとして展開されるCSR活動と説明されるものだが、「本業を通じて行われるCSR活動」と捉えることができる。ちなみにCRSVは「CSVの中で地域の社会的課題の解決に特化したもの」で、これに対し中小企業庁が新たなカテゴリーを用意したとでもいうべきだろう。
このコラムでは、いつでもそれぞれの概念について確認できるように、次回以降で個別の要約も記しておくことにする。
(氷室あずさ)
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