社会的認知の向上を目指して WEB版

パチンコもパチスロも「マシン・ギャンブリング」との認識

 1027日付ザイオンラインに、≪いまやカジノの収益の大半を占めるスロットなどの「マシン・ギャンブリング」に偶然の勝ちはなく、かつ科学的に依存症を作り上げる≫とのタイトルで作家の橘玲氏がコラムを掲載した。

 文化人類学者でニューヨーク大学メディア文化コミュニケーション学科准教授のナターシャ・ダウ・シュールがこのほど『デザインされたギャンブル依存症』(原題は“Addiction by Design; Machine Gambling in Las Vegas(デザインされた依存症 ラスベガスのマシン・ギャンブリング)”・青土社)をリリースしたことに触れ、 <シュールは「80人におよぶギャンブラー、ギャンブル依存症のクリニックや支援団体、業界人、テクノロジー・デザイナー、カジノのスロット部門マネージャー、マーケティング戦略担当者」などにインタビューし、一般にはほとんど知られていないギャンブル業界の大きな変化を詳細に解き明かし、大きな話題を呼んだ>と評価。<ラスベガスのカジノというと、わたしたちはルーレットやブラックジャックやバカラなどのテーブルゲームを思い浮かべるだろう。だが2000年代に入ってから、カジノの収益の大半は「マシン・ギャンブリング」からもたらされており、その一方で依存症という深刻な社会問題を引き起こすことにもなった。ラスベガスは巨大な社会実験であり、大衆消費資本主義の未来世界でもある。本書を読めば、わたしたちがこれからどこに向かうのかがわかるだろう>と位置付けた。

 以下、この書について持論を交えながら書評を展開するのだが、<アメリカ・ゲーミング協会会長は2003年、マシンが業界収益の85%以上をあげていると見積もった。「今この業界を盛り立てているのはスロットマシンだ」と、彼は断言したという。マシンの収益がブラックジャックやクラップスなどのテーブルゲームの収益をはじめて上回ったのは1980年代初頭で、それ以降、マシン・ギャンブリングを認可する州(2012時点で41)も設置台数・売上も右肩上がりで増えつづけている(1996年の50万台が2008年には87万台ちかくに達した)。>との本書のエピソードを引いた後、日本のパチンコ・パチスロに言及。

  <日本は世界的なマシン・ギャンブリング大国アメリカには100万台ちかいギャンブルマシンがあると聞いても、「なんだ、そんなものなのか」と思うひともいるだろう。実は日本は、オーストラリアと並んで世界でもっともマシン・ギャンブリングが盛んな国で、日本全国に設置された「遊戯機」はパチンコが243万台、パチスロが157万台で、合わせて400万台を超えている。それも2016年の450万台から漸減してこの数字なのだ(警察庁生活安全局保安課「令和2年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯の取締り状況等について」)。だがラスベガスはきわめて特殊な都市で、200万人ほどの居住者のほとんどがギャンブル産業に頼って暮らしている。(中略)好みのギャンブル形態がマシンという住人は、1984年には30%しかいなかったのが、ほんの10年ほどで78%にはねあがった。1990年代半ばには、ギャンブル依存症のための自助グループ、ギャンブラーズ・アノニマス(GA)の地元集会に参加する圧倒的多数も、もっぱらマシンでプレイしていた。>と、カジノマシンと、射幸性が大幅に制限された日本のパチンコ・パチスロを同列に扱った上で、依存に関して説明。パチンコ・パチスロを「遊技機」ではなく「遊戯機」と表記しているところからも、正確な知識が欠如しているのか、もしくは射幸性が制限されていようがギャンブルマシンに変わりないとの認識にあることが窺える。

 この後、氏は本書に記されている依存患者の実態を描いた箇所を紹介しつつ、<現代のカジノは、株主の期待に応えるため、「持続的なゲームの生産性」を高めるありとあらゆる努力をしている。その利益は、ゲームプレイの加速と時間の延長、賭け金の増大に比例する。「現代の資本主義が戦略的に消費者の感情に働きかけ、価値を生み出しているというのなら、商業的カジノのデザインはまさにその好例だろう」とシュールはいう>と掲げ、<そのなかでも、もっとも興味深いのはマシン本体だ。かつてはスロットマシンがほとんどだったが、その後、よりゲーム性の高いポーカーに人気が移ってきた。スロットは日本のパチスロと同じで、スタートボタンを押すと、さまざまな数字や絵柄が描かれた3列のリールが回転し、ストップボタンを押して数字・絵柄が揃うと賞金がもらえる。73つ揃うのがジャックポット(大当たり)だ。かつてのパチンコは釘師が11台調整していたため、台の特徴を読むことでプロのギャンブラーは店に勝つことが可能だった。だが完全にコンピュータ化されたマシン・ギャンブリングでは、スタートボタンを押した瞬間に結果は決まっており、人間が機械を出し抜くことはできない。><たんなるマシンに生命を吹き込み、曖昧で謎めいた偶然を演出するのは、主に次の3つの機能だ。ひとつは、スロットのリールの回転を左から右へと順番に止めていくサスペンス感。ふたつめは、(当たりか外れかを決める)ペイラインの上下の列の図柄を見せてニアミス感を味わわせること。3つ目が自己コントロール感を演出するストップボタンだ。スロットのストップボタンは、プレイヤーに「自分の動きがゲーム結果を決めている」という自己コントロール感を与える道具で、結果にはなにも影響しない。だがストップボタンをつけると、ほかのマシンよりプレイしつづける時間が大幅に長くなる。 ギャンブリング・マシンは「ギャンブラーの賭け金を正確かつ調整された科学的方法で再分配する複雑な計算装置」にすぎず、どこにも偶然はない。乱数発生器(RNG)をギャンブル関係者が「本当に新しい神」と呼ぶのは、すべての魔法をプログラムによって生み出しているからだ。>と記した。

 この後も長々と常習的ビデオ・ギャンブリング装置は「人類の歴史上最もたちの悪い種類のギャンブル” “スロットマシンは人間用のスキナー箱などの小見出しで文章は続き、さらに次回コラムにも続くという。 

 いちいち、海外のカジノマシンとその依存に関する説明に、日本のパチンコ・パチスロを引っ張り出してくる必要性があるとは思えないが、久里浜医療センターの松下副院長も同様の認識のもと講演などを行う中、誤った認識の流布には引き続き注意したいところだ。

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