コロナ禍にあって、さまざまな事業者がオンラインに活路を見出そうとしている。しかしながらパチンコ・パチスロという娯楽はリアルでの遊技提供のみ。オンラインパチンコ・パチスロといえば、シミュレーションゲームとして実機を楽しむものが主流であった。だが2年ほど前から、遠隔操作でパチスロ実機をプレーする「アミュライブ」や、2.5次元パチンコを謳った「ニコハン」というオンラインサービスが登場した。しかし、版権の問題等で機種ラインアップが貧弱にならざるを得ず、景品との交換もできない背景で、アミュライブは2019年秋にサービスを終了、ニコハンは20年春にサービスの無期限休止を発表した。
そのようななか、Net IB Newsが2020年9月9日に「オンラインパチンコ『爆PACHI』始動、法定通貨との交換も可能」と伝えた。記事によると、フィリアウェルスエンターテイメントという会社が、次世代型ワールドオンラインゲーム市場「GORAKU・WORLD」内にオリジナル・オンライン爆裂パチンコ&パチスロサイト「爆PACHI」を導入するという。しかも、「日本の大衆娯楽として依然根強い人気を誇るパチンコ・パチスロを、オンラインゲームとして世界中で楽しめるようにすることで、日本の娯楽文化を世界に広めること」を目的にした導入と伝えられていた。
しかしながら、同年12月1日付のNet IB Newsは、この『爆PACHI』が『GORAPACHI』に名前を変え、11月27日からサービスをスタートさせたことを伝えた。その記事によると、前述の会社のコンサルティング先であるセーシェル共和国法人GORAKU WORLD SP Ltd./CHAO代表による次世代型ワールドオンラインゲーム市場『GORAKU・WORLD・MARKET』となっており、「日本のパチンコ・パチスロではなく、日本娯楽『GORAPACHI』ゲームとして世界中にPRすることで認知度向上、新規海外ファンの開拓が狙い」「我々は、日本人を対象としておりません。日本人には本場のパチンコホールがあります。『GORAPACHI』ゲームは日本文化が好きな世界中のゲームファンのためにスタートします」とスタンスを変えてきた。
その判断は妥当だと考えるが、同サイトでギャンブルゲームの1つとしてパチンコやパチスロが提供されれば、日本独自の大衆娯楽「ぱちんこ」の、世界に向けたミスリードは生じることになる。この点は引き続き、業界としての懸念材料となるだろう。
とまれ、世の中のデジタルトランスフォーメーションの動きを見れば、オンラインでのサービス提供に対応していく必要性は感じられる。遊技業界が警察庁の所管で提供してきた日本独自の娯楽文化であり大衆娯楽であるパチンコ・パチスロの相応しい在り方に思いを巡らせながら、遊技産業として大衆娯楽の範疇でオンラインでも遊技を提供できる環境整備について議論する時期に来ているのかも知れない。
(氷室あずさ)
この記事へのコメントはありません。